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Extail: 実物体による身体動作拡張のためのヘアエクステ型ウェアラブルデバイス

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Summary
  • 身体動作を拡張するヘアエクステ型ウェアラブルデバイスを開発しました
  • 体動に応じた髪の動きの誇張表現について研究していました
  • 徹底的に人の頭髪の外観に馴染ませる、日常生活に耐える装着性を実現する点が技術的困難でした
TEI2024 WIP(Poster) Abstract:https://doi.org/10.1145/3623509.3635259
 
Wearing Demo Video
作者着用時
作者着用時
Extailは、毛束を尻尾のように左右に振れるヘアエクステ型ウェアラブルデバイスである。身体と映像表現のシームレスな融合を探求する中で、着用者の体動に合わせて毛束が揺れる動きを誇張する演出をプロトタイプした。 本研究の目的は、実物体による身体動作拡張手法の開発と、その表現の探索である。従来、身体拡張の主目的は身体能力の向上であるが、本研究は人間の身体性自体の探求に関心を寄せている。特に、アニメーションやコンピュータにおける表現を身体上で再現することに焦点を当てた。映像的表現を実物体で再現する事例は進展しているが、人体上での再現は物理的な制約が多く高難度である。本研究では、髪を用いてこの課題に向かった。髪は、他の身体部位に比べて動作拡張の実装が比較的容易である。また、漫画やアニメ、歌舞伎等で髪を動かす表現があることから、既知の体験の延長に位置づけられると考えた。
再現対象として着目したのは「誇張」表現だった。髪の動きの誇張を「体の動きに連動する髪の動きを、実際よりも大きく動かすこと」として実装を開始した。日常動作を対象とするモーションスタディを通じて、以下2つの発見を得た。これは、毛束に限らず、身体動作を入力・映像的演出を施した動作を出力とする身体動作拡張デザイン全般に通用するものと考察する。
1つ目は、入力を出力に反映するタイミングを多少遅延した方が、演出(出力動作)が知覚しやすい点で効果的になることである。身体が動いている最中の髪の動きは、注視していないと視認しづらい。そのため、着用者の動作をリアルタイムで振り動作に反映すると、誇張効果がよくわからなかった。そこで、アニメーション原則の一つである「フォロースルー」に着目し、動作を誇張するタイミングを遅らせてみた。検証の結果、入力を出力に反映させるまでの遅延時間は0.2秒程度が適していると分かった。
2つ目は、入力を厳密にトレースして出力に反映することが、動作の演出として効果的とは限らないことである。例えば、直上にジャンプした場合、毛束はほとんど左右に振れない。しかし、着地後に毛束がふわっと左右に揺れる動作は、アニメーションチックな動きの余韻として受け取れ得た(参考:デモ動画1:22-)。これは、上下方向の加速度を入力とし、左右の振り動作に反映することで得られる結果であり、理論上正しい対応関係ではないが、演出として有効にはたらくことがあるといえる。
以上はHCI領域の文脈に位置づけた研究紹介であるが、最後に純粋なモチベーションと、実際の歩みに触れておきたい。
本制作のきっかけは、犬が尻尾を振るようにポニーテールが振れたら可愛い、そんな光景を見てみたい!という空想だった。ただし、当時は具体的なビジョンはなく、価値を模索するところから探索的に進行した。
難しかったのは、アートと実用の両面にフィジカルに向き合い続けた点である。表現のつくり手として情熱があったのは、さも身体の一部かのように作り込むこと、現実には起こり得ないが、現実から乖離しすぎない魅力的なふるまいを実現することだった。そして、それがエンタメとして消費されるだけでなく、日常生活に溶け込み、心地よいものとして愛されるようにつくりたいと想っていた。これを実践的に探索していくためには、日常使用に耐え得る着用性や堅牢性を要したのであり、プロトタイピングが低速化しやすい点には苦しんだ。
今後は、モータを使わないようにするなど、仕組みの簡工夫を通じて、さらに身体との一体感を高めたいと考えている。着用者としても、観察者としても、本表現がより実身体の一部として感じられるようになってこそ、新たにみえるものがあるように思えるからである。
Abstract Video of https://doi.org/10.1145/3623509.3635259