もし、ポニーテールが人間の尻尾だったら?
制作期間 | 10ヶ月(2021.05-2022.02) |
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制作体制 | 個人制作(学部卒業制作) |
スキル |


もし、ポニーテールが人間の尻尾だったら?
制作期間 | 10ヶ月(2021.05-2022.02) |
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制作体制 | 個人制作(学部卒業制作) |
スキル |
着用者の状態を示すウェアラブルデバイスには、 動物の耳や尻尾を模した外観がよく見られます。 それらを目立たずに利用することはできません。
表現対象が明確に現れることは、表現方法を拡張する目的にすらなり得ますが、 表現媒体の様相として、その存在が目立つことには異議を唱えます。
そこで本研究では、表現方法の拡張を目立たないウェアラブルデバイスで実現することを目的に、 束ねた髪を尻尾のように動かす制御機構を備えたヘアエクステ型デバイスを制作しました。
つまり、動物の耳や尻尾といった借り物の「形」を付け加えるのではなく、 人間の既存のパーツに表現するという「機能」をインストールしようという発想です。
表現媒体として用いた髪には、漫画やアニメーションにおいて、感情を表すという既知の表現があります。
また、髪とのインタラクションを扱う先行事例は、髪に触れることによる情報の入力に着目した例が多い上、出力は伸縮や発光の例に留まっていました。
本研究では出力機構に主眼を置き、髪の動的表現に取り組みました。入力の一例として心拍数と音声認識を扱い、これによる制御を実装しています。
本研究の展望は、尻尾のような表現力を得た髪が、単にエンターテインメントとして消費されるのではなく、表現やコミュニケーションの手段の一つとなることです。
このプロダクトは、感情表出の補助として実用が期待できます。また応用例としては、音声認識と髪形の動的変化の組み合わせによって、手を使わずに髪形を制御することが挙げられます。
わたしの顔の表情は、たいして豊かではありません。例えば、ものすごく嬉しい時にものすごくニコニコしても、 ちょっとニコニコしている時と大差がないのです。そのため、気持ちが昂った時は身振り手振りが大袈裟になり、相手をびっくりさせてしまうことがあります。顔面以外の手段をセーブしていると、わたしの喜びは伝わりきらないように感じで、少し切なくなることもありました。
また、怒っていないのに怒っていると思われたり、真剣なのにヘラヘラしていると思われたことがある方もいると思います。さらに、病気や習慣などの影響で、顔の表情をうまく作れない方もいます。感染症対策でマスクをすれば、顔面にはもっと頼りずらくなりました。
わたしたちが感情などを表現する際、顔の表情だけを頼っているわけではありません。しかし、もっと別の手段で表情の醸してみたいと思った時、後頭部で力を持て余している尻尾の存在に気づきました。
「ポニーテールが、犬や猫の尻尾が感情表出を行うように機能したらどうだろう?」
もちろん、髪の毛が自律的に動くなんてあり得ません。掲げている「目立たせない」という目的に矛盾を感じるかもしれません。でも、動かすための機構が隠蔽されていて、人間として自然な見た目を保っていたら?…髪は、他律的には動きますし、私たちは普段からその様子を見ています。ならば、髪が自立的に動くことも徐々に受け入れられるかもしれません。そんなモチベーションで取り組みました。
感情は、表情や言葉に出すことで伝えられるように、髪で伝えられるとしたら、私たちのコミュニケーションはどうなるでしょうか。実は、コミュニケーションデザインに取り組んでいるのです。